脳卒中とは脳血管障害のことで、大きく分けると脳の血管が破れるタイプ(脳出血)と脳の血管が詰まるタイプ(脳梗塞)があります。
脳卒中は生命に関わることが多く、実際に日本人の死亡原因の3位となっております。
また、生命が助かったとしても様々な後遺症が残ることが多く、この面でも怖い病気であります。
後遺症として運動・言語・感覚障害などがありますが、運動障害のうち痙縮という下図のように手足の筋肉が突っ張ってしまう事が大きな問題となります。
痙縮により、
1.介護者の服の着脱をしにくいという介護上の問題
2.関節が曲がらないため、皮膚の清拭がしにくいという衛生上の問題
3.歩きにくいといった動作上の問題
4.筋肉がこわばって痛い
といった問題が生じます。
痙縮に対しては以前は内服薬、ブロック注射が主体でしたが前者は効果が不十分、後者は効果があるものの治療を行なっている場所が少ないという欠点がありました。
しかし近年、痙縮の治療として新たにボツリヌス療法が加わりました。
ご存知のかたもいらっしゃると思いますが、ボツリヌスとは食中毒で有名なボツリヌス菌が産生する毒素のことです。
この毒素は神経と筋肉が接合する部位に作用して筋肉の麻痺を起こさせます。
この為、ボツリヌスによる食中毒では呼吸に関わる筋肉が麻痺して呼吸ができなくなり、死に至ることがあります。
この毒素の性質を利用して痙縮による筋肉のつっぱりをやわらげる治療がボツリヌス療法です。
この治療により、
1.痛みが和らぐ
2.筋肉が柔らかくなり、日常生活が行いやすくなる
3.リハビリテーションが行いやすくなる
4.介護がしやすくなる
といった効果があります。
もちろん、ボツリヌス菌を直接投与するわけではないので、ボツリヌス菌に感染することはありませんし、ボツリヌスの量も安全な量で使用するので、問題となる副作用は稀であります。
当院でもボツリヌス療法を行っておりますが、注射にあたってはまず診察させていただいた上で適応を判断いたします。
また、ご説明する事項が多いため、診察・注射は予約制としておりますのでよろしくお願いいたします。
ご質問・ご不明点等ございましたら当院まで遠慮なく、ご相談下さい。